はじめに
児童・障害福祉に携わる支援者の勉強会「ハマチの会」が開催されました。久しぶりに、石井さんと吉田さんが並んだ中での研修会となりました。
ふたりとも、いろんな地域で講師やファシリテーター等にひっぱりだこの状態ですが、こうやって変わらず「ハマチの会」に参加いただけありがたい限りですし、また、おふたりの話を聞きに多くの方にご参加頂きました。
国の障害福祉政策の動向
石井さんが今回持参されたのは、サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者の更新研修で実際に使用されている国の研修資料(全91枚)です。「飽きたらすぐやめます」という言葉でスタートしたこの講義、実際はとても密度の濃い内容でした。
国のメッセージを3つに整理する
膨大なスライドを前に、石井さんは最初にこう言いました。
「今回の資料で国のメッセージが結構詰まっていて、①本人中心、②意思決定支援、そして③地域の支援力を高めていくことが隠れたメッセージです」
この整理がとても分かりやすく、91枚の資料が一気に見通せるようになりました。さらにもう一つ、「アウトカム評価」へのシフトというキーワードが、全体を貫くテーマとして提示されました。
量から質へ──放課後等デイサービスの現状
石井さんが2019年に福岡市内で放課後等デイサービスを立ち上げた当時、市内の事業所数は173。それが現在では343と、ほぼ倍増しています。
「お金はかけてみたよ、増えただろう。じゃ、質は上がったのか?」
この問いかけは、まさに今の現場が突きつけられている課題だと感じました。予算が約4倍(18年度比)に膨らんだ今、国の関心は「量の確保」から「質の担保」へと明確に移行しています。
アウトカム評価という波
本資料の中で「アウトカム評価」という言葉はたった1回しか登場しないにもかかわらず、石井さんはそこに強い国のメッセージを読み取っていました。
「支援施設から地域生活への移行をアウトカムで評価していこうという流れは、いずれすべてのサービスに適用されていく」
児童発達支援であれば集団適応力の変化、グループホームであれば生活能力やQOLの変化を「介入前・介入後」で数値化していく時代が来るということです。「どの評価バッテリーを使えばいいのか」という課題も正直に共有していただき、現場の試行錯誤が続いている段階であることも伝わってきました。
協議会の活用と地域の支援力
設置率97%に達した地域自立支援協議会。国はすでに「整備した、あとは活用するのは地域の責任」というフェーズに入っています。
「単の事業所・法人が頑張る時代は終わった」
この言葉は重く響きました。特に専門部会の活用が個別ニーズを地域ニーズへと昇華させる鍵になると強調されており、協議会への積極的な関与が今後さらに求められると感じました。
本人参加の原則──意思決定支援の強調
令和5年度の個別支援会議における本人の同席率は全体で64.1%。相談支援分野は78%と比較的高い一方、児童分野では子どもの参加が難しい実情があります。
「本人の参加を求めることで本人の状態が悪化することが見込まれる」という理由が同席しなかった理由の半数超を占めているが、「これはもっと改善できそう」
この言葉が印象的でした。個別支援計画に本人がいない場で話し合うこと自体が「本人中心ではない」という原点を、改めて突きつけられた気がします。
虐待防止と権利擁護
虐待の3類型(養護者・福祉施設従事者・使用者)の整理は、研修のたびに確認すべき基礎知識として改めて強調されました。
「知的障害の方が虐待対象の74.3%を占める。言葉が通じないから殴ってしまう──そんな地域を早く終わらせたい」
福祉施設従事者による虐待件数が増加し続けているという現実に、胸が痛くなりました。研修で「やった」で終わりにせず、地域全体で当たり前を変えていく取り組みが必要だと感じます。
強度行動障害への集中的支援
石井さんが「悔しい」と何度も口にしていたのが、強度行動障害に関する話題でした。
「行動障害は状態を表す判定であり、予防できる。適切な支援があれば増え続けるはずがない」
児童発達支援の段階ですでに494名が強度行動障害支援の加算対象になっているという数字には驚きました。中核人材・広域的支援人材の育成が進んでいること、そして「1事業所で抱え込まない」という国のメッセージが、現場へのエールのように聞こえました。
インクルージョンの推進と第三者評価
国連から日本の特別支援学校への指摘が入ったことに触れ、「分断するな」という国際的な視点も紹介されました。また、自動発達支援センターへの第三者評価の義務化が進んでいることから、「歴史があるから良い支援、ではない」という言葉も印象的でした。
「悪い支援を定義づけることが、地域の支援力向上に最も効果的」
という言葉は、マルトリートメントや虐待の定義を地域で共有することの重要性を示しており、非常に実践的な視点だと感じました。
会全体のディスカッションより
講義後の意見交換では、虐待防止研修や意思決定支援研修の実施方法について話題になりました。多くの事業所が「内部研修」を中心に行っている現状の中で、外部講師を招くことの効果や、指導監査での評価との関係なども率直に話し合われました。
「外部から入ってもらうことで、職員の受け取り方が変わる。大人も一緒」
という言葉は、研修の形式よりも「誰が、どのように届けるか」が大切だということを教えてくれました。
また、サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者の更新研修・実践研修についても、石井さんの法人で随時受け付けているとの案内がありました。焦らず、自分の事業所に合った研修機会を選ぶことが大切だと感じました。
参加を終えて
今回の会を通じて、「本人中心・意思決定支援・地域の支援力向上・アウトカム評価」という4つのキーワードが、今後の障害福祉の方向性をほぼ網羅していると感じました。
国の政策の動向を「知っている」だけでなく、自分たちの支援にどう落とし込むかを考え続けることの大切さを改めて実感した夜でした。次回(9月18日)も楽しみにしています。
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