第47回原点回帰の会のご報告

 


第47回「原点回帰の会」のご報告です。今回の原点回帰の会は、就労支援分野を中心に、制度改正の動向から現場の実践まで、幅広いテーマが盛り込まれた濃密な時間でした。参加者の皆さんのリアルな声を聞きながら、改めて「支援の本質とは何か」を問い直す機会となりました。

前回、松尾さんが手術・入院中のためお休みされていたことから、今回は井福・松尾さんの久しぶりの通常体制での開催となりました。




① 令和8年度の緊急制度改正について

冒頭から、制度改正に関する具体的な話題が続きました。中でも印象的だったのは、リタリコさんの訪問看護による児童の発達支援をめぐる炎上と、絆ホールディングスの問題が重なって語られた場面です。

「どっちもグレーです」

この一言が象徴するように、法令の解釈の曖昧さが現場に混乱を生じさせています。訪問看護の財源を使って児童発達支援を提供するというモデルは、一見「届かなかったサービスを届ける」という意義があるように見えます。しかし、児童福祉法の枠を超えて医療の財源で福祉的支援を行うことへの問題意識が、さまざまな立場の方々から寄せられたことによる炎上でした。

B型事業所の報酬単価についても、平均工賃による刻み方の変更により「ちょうど2万円前後に集中していた事業所の単価が実質的に下がった」という声がありました。頑張っていた事業所がしわ寄せを受ける構造になっていないか、注視が必要です。

また、新規指定の厳格化(設立まで最長6ヶ月前からの事前審査)については、

「準備していたお金が尽きるのが早いかどうか、というぐらいの厳しい状況」

という言葉が印象に残りました。参入障壁を高めることで質の向上を図る意図は理解できますが、本当に地域に必要な事業所まで萎縮させてしまわないか、今後の地域の社会資源の動向を注意深く見ていく必要があると思います。




② 在宅就労の厳格化について

今回最も議論が白熱したテーマでした。

「1時間以内に駆けつけるという条件は、現場感覚からするとハードルが高い」

という意見が読み上げられたとき、会場の多くの方が頷いていました。特に周辺地域など遠方に利用者が居住している場合、物理的に対応が困難なケースが生じます。

一方で、在宅訓練の意義を示す実践報告も印象的でした。大学卒業後に引きこもりが続いていた方が、在宅での週1回のパソコンのやりとりからスタートし、5ヶ月かけて通所へ移行、最終的には一般就職を実現したというケースです。

「丁寧なサポートさえあれば、在宅訓練の価値は変わらない」

この言葉は、制度の厳格化に翻弄されがちな議論の中で、原点を思い出させてくれるものでした。

しかし現実には、

「休みにすべき人を在宅にしている」「交通費が出せないから在宅にしている」

というケースが多く存在することも率直に語られました。体調不良の当日に「在宅に切り替えます」と連絡が来ても、パソコンで訓練ができてしまう環境が整ってしまっていることで、通所の意味が薄れている実態があります。

計画相談の立場から感じたのは、今後、在宅支援を利用している担当利用者について

「在宅支援が必要だという意見書を書いてください」

と求められる場面が増えることが予想されるということです。本当に必要な方への在宅訓練であれば迷わず対応できます。しかしそうでないケースでの書類作成の依頼は、私たち相談支援専門員の専門性と倫理に関わる問題です。アセスメントを丁寧に行い、在宅訓練の必要性を根拠をもって説明できるよう、事業者とも連携していかなければと改めて感じました。



③ 障害者雇用代理ビジネス・eスポーツ・麻雀が生産活動として不適切と明示されたことについて

「福祉は利益追求の道具ではありません」

アンケートに寄せられたこの言葉は、参加者の思いを代弁していました。

eスポーツや麻雀をB型の生産活動として認めるかどうかという議論では、単純に「ダメだ」とは言い切れない複雑さもありました。ゲームへの興味をきっかけに外出できるようになった方のエピソードもあり、活動そのものに価値がないわけではありません。

ただ、問題の本質は別のところにあると感じました。ゲーム大会の日本チャンピオン級の職員がいる事業所でさえ、eスポーツと利用者支援の結びつきについて

「何の支援にもなっていないという感じが正直あった」

と語っていたことが印象的です。

さらに踏み込んだ発言もありました。

「税金で障害のある方のeスポーツ選手を育成することになってしまう。一般の人は税金で選手育成はできないのに」

この視点は、制度の趣旨という観点からも非常に重要です。生産活動の定義をめぐる議論は、「何をするか」よりも「なぜするか」「誰のためにするか」が問われているのだと思います。

絵を描く活動についても、国からの通達があったことで「一律にダメと言う事業所がいる」という声があったように、なぜ国がそのような通達を出したのかといった「支援の文脈」や「本人のニーズ」を無視した杓子定規な制度適用は、かえって当事者を傷つける可能性があります。

「"仕事を奪う"ということになっているという自覚がないのは、支援者の想像力の欠如ではないか」

この指摘は、計画相談として事業者と本人の間に立つ私たちも、制度改正の影響を当事者目線でしっかり受け止めなければならないと教えてくれるものでした。



④ 現場の実践から見えてくること

就労継続支援の本質について、最も心に響いたのはこの言葉でした。

「誰かに必要とされたり、感謝されるっていうのが、先にある」

仕事を通じて達成感を得ること、感謝される経験をすること、それが工賃の額よりも先にあるはずだという主張は、制度や数字に追われがちな日常の中で、私たちが忘れてはいけない視点です。

参加者の方から、「消毒液の補充」という小さな役割を与えられたことで、来所しなくなっていた高齢の利用者が戻ってきたというエピソードも印象的でした。どんなに重い障害があっても、「自分がここにいる意味」を感じられる場をつくることの力を、改めて感じました。

また、就職した利用者が、適応に困難を抱えながらも出向という形で元の事業所との繋がりを保ちながら新しい職場で働くという工夫には、制度の枠を超えた創意工夫を感じました。

「ぐるぐる回しじゃない、働く場所でちゃんと給料が出て、働く成果はそこで生まれている」

この仕組みを「ぐるぐる回し」と区別して語ったことは、事業者の取り組みを評価する際の重要な視点になり得ると感じました。



⑤ 計画相談として、この場から受け取ったこと

「計画相談は、今後、何て言われるかって想像がつく」

この言葉は、私たちへの問いかけでもありました。制度の歪みがしわ寄せとして計画相談に届いてくる構造は、今後さらに強くなるかもしれません。

だからこそ、事業所を「見る目」を養うことが必要だと感じます。宣伝文句だけで事業所を評価してしまうと、利用者を誤った方向へ導いてしまうリスクがあります。

「昔ながらの就労支援が絶対正しいとも思わない。でも送り出す勇気を持ってやっている事業者は評価すべき」

この言葉のように、硬直した見方をせずに、本人の意思とその人の状態像に合った事業者を丁寧に選んでいくことが、私たちの役割だと改めて思いました。

制度の歴史を振り返り、

「制度があるからそれを使えばいい、じゃなくて、本来そこには使われ方の趣旨がある」

これまでの障害福祉サービスは、当事者や保護者の長い戦いの歴史でもあります。私たちは、その歴史を学び、理解しながら、支援者として制度の目的と意図を利用者とともに考え、その趣旨を守る役割を担っていることを再認識しました。




おわりに

第47回原点回帰の会は、タイトルどおり「原点」に立ち返るための時間でした。制度改正の波の中で、私たちが何のために、誰のために動いているのかを問い直すきっかけをもらいました。

次回は8月21日開催予定とのことです。また皆さんとともに、「支援の本質」を語り合える場に参加できることを楽しみにしています。







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