第85回チキンの会のご報告


はじめに

3ヶ月に1回、相談支援について学ぶ「チキンの会」。今回のテーマは「スーパービジョンを考えよう」でした。冒頭、寺川からは「これを聞き終わって腑に落ちることはおそらくないと思います。それは、実践を伴わなければ理解できないからです。」という前置きを行いました。この一言が今回の研修全体の姿勢を象徴していたように思います。座学でありながら、最初から「理解したと納得することはないと思いますよ。」と釘を刺す研修は珍しいのかもしれません。



チキンの会の由来という余談から見える「場」の本質

本題に入る前に、春日のケンタッキーフライドチキンで、チキンの会の集まりが「愚痴をこぼし合う会」としてスタートしたという由来話は、単なる笑い話ではなく、実はこの日の本題そのものを先取りしている内容だったように感じます。1人事業所で孤立し、答えを持たないまま現場に立ち続ける中で、「誰かに聞いてもらう場」が自然発生的に生まれた——これはまさに後段で語られる「支援者を支える支援」「ピアスーパービジョン」の原型だったように思います。冒頭の雑談がすでに、今回の研修内容の核心が埋め込まれていたのです。



「支援者である皆さんは、誰が支えてくれていますか」

研修は「皆さんを支えているのは誰か」という問いかけから始めました。この問いに即答できる参加者が意外にも少なかったという事実こそが、今回の研修の出発点だったと思います。「悩んでいることに気づいていない人ほど、実は大変な状況にある」という指摘は、まさに現場感覚そのものです。今日の主役は利用者ではなく「支援者自身」である、という宣言が、その後の全内容の土台になっていたように思います。



定義:監視ではなく「共に見渡す」こと

スーパービジョンの語源が「スーパー(高い場所から)+ビジョン(見渡す)」であり、決して「上から監視する」ことではないというお話は、多くの現場が誤解している部分だと感じます。上司が部下に一方的に教えるのは「教育」であって「スーパービジョン」ではない、同じ方向を見ながら気づきを得ていく関係性——日々の面談や後輩指導の場面において、現在では絶対に必要なスキルになってきます。


なぜ今スーパービジョンなのか、という4つの背景

計画相談がスタートしたばかりの平成24年の制度開始から、福岡での実動の乏しさ、そして「相談支援専門員は法人内に自分しかいない」という孤立の構造の話は、非常に生々しいものだったと思います。特に「相談支援が抱える1番の課題は運営法人である」という指摘、「支援者が相談支援専門員を困らせているのではなく、法人の無理解が相談支援専門員を追い詰める」という言葉は、現在でも多くの課題のひとつです。多機関連携の複雑化、主任相談支援専門員制度の創設、そしてバーンアウト・離職の予防——この4つが、スーパービジョンを「避けて通れないもの」にしている背景であり、単なる技法論ではなく制度的必然であることをお伝えしました。


3つの機能:管理的・教育的・支持的

管理的機能については、私たちノーマは、新人に担当件数を持たせず同行だけを続けさせ、本人が「できそう」と感じるまで待つという実践例をお話しました。その間は、新規の受け入れも、移管も一切しません。「安心して力を発揮できる環境を整えること」が管理であり、監視ではないからです。

教育的機能では「鍵は問いにある」という言葉を繰り返しお伝えしました。答えを教えるのではなく、「あなたならどうする」「本人は何と言っていた」と問い返すことで、支援者自身が本人のニーズに立ち戻る——この教育的機能の核心は、日々のケース会議等でもすぐに応用できるものです。

支持的機能については、「褒められることがほとんどない仕事だからこそ、まず認められること自体が支えになる」というお話をしました。感情労働としての相談支援の厳しさを言語化したことで、支持的機能の重要性が単なる「励まし」ではなく専門的な機能であることをお伝えしました。


パラレルプロセスという視点

今回最も難解でありながら最も持ち帰って頂きたい視点だったのが、この「パラレルプロセス」です。バイザーとバイジーの間で交わされたやり取りの質(問い詰めるのか、待つのか、決めつけるのか、尊重するのか)が、そのまま支援者と利用者の関係性に「移し出される」という説明は、責任の重さを実感させるものでした。「厳しく教えられた人は厳しい視点になっていく」という話は、これまでの自分自身が受けてきた指導のあり方を振り返らせるきっかけになったでしょうし、逆転移についても「感情を持つこと自体は悪ではなく、気づかないまま支援することが問題」という整理は、現場で抱えがちな自己否定感を和らげることにもつながってのではないでしょうか。


似て非なるものの整理

OJT、ケース会議・担当者会議、コンサルテーション、そしてスーパービジョン——これらの違いを「焦点がケースにあるか、支援者自身にあるか」という一点で明確に区別したことは、今後の研修設計にそのまま活かせる整理になったと思います。質疑応答で「SVの振り返りが、結局ケース検討に寄ってしまう。」と質問がありましたが、まさにこの整理の実践的な難しさを物語っていたと思います。


5つの形と「バイジー力」

スーパービジョンは、グループ・個人・ピア・セルフ・ライブという5つの形があり、特に「立ち話でもスーパービジョンは成立する」という言葉にあったように、スーパービジョンは形ではなく、実践がすべてであることをお伝えしました。理想のスーパーバイザーを待つのではなく、まず身近なところから始めるべき、という姿勢は、地域における実践のハードルを下げてくれるはずです。(ただし、その場の指示や指導はスーパービジョンではありませんが)

そして最後に「バイジー力」——スーパービジョンの成果の半分はバイジー側の準備と姿勢で決まる、という話をしました。なぜなら「させられる」「やらされる」受け身ではスーパービジョンは機能しないことが多いためです。やらされる場ではなく、自ら求める場になったときに初めて、スーパービジョンが機能するということをお伝えしたことで、これまで研修等の現場でカリキュラムのひとつとして行われていたスーパービジョンばかりを経験してきたからこその苦手意識を取り除くきっかけになればと思います。


さいごに

私自身が過去に、現在はノーマのスーパーバイザーである石丸氏に対して見せた、スーパービジョンを受けた際の未熟とも言える態度を包み隠さずお話しましたが、それは、参加者のみなさんにとって、「自分の弱さを見せられることは、専門職の未熟さではなく成熟の証」ということをお伝えしたかったからです。今後、自分自身がバイザーとして、あるいはバイジーとして場に立つときに、是非、思い出して頂けたらうれしいです。

最後に投げかけた「明日あなたは誰にスーパービジョンを求めますか」という問いを、そのままみなさん自身の宿題として持ち帰っていただき、今後、開催されるSV筋トレ部やノーマの公開研修への参加を通じて、スーパービジョンの実践の場に足を運んで頂けるきっかけになればと思います。


次のチキンの会は、10月16日、そして原点回帰の会は、8月21日に開催されます。是非、ご参加頂けたら幸いです。



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